2005年3月27日

聖書の中には、ときどき驚くほど文学的な表現が出てきますが、小学生の時に読んで今も覚えているキリストの言葉に、次の言葉があります。「栄華を誇ったソロモン王すら、野の草花ほどには着飾っていない」。

週末のジョギングでニュンフェンブルグ宮まで走ると、芝生にクロッカスやすずらんの花が咲き出し、1日ごとに大きくなっていくのに気づきます。こうした花々を見ると、冒頭の聖書の中の言葉を思い出し、人間の栄華は草花の美しさに到底かなわないという箴言に、一縷の真実を感じます。ニュンフェンブルグ水路も氷がすっかり溶けて、鴨や白鳥たちが泳ぎ回っています。夜から早朝にかけて、アムゼル(つぐみ)が春の到来を告げているのを聞くと、「長い冬が終わった」ということを感じます。

ミュンヘン市立博物館のシネマセンターで、ルキノ・ビスコンティの「地獄に落ちた勇者ども」(TheDamned)を20年ぶりに観ました。ドイツに住みながら観ると、クルップ家をモデルにした家族の葛藤を通じて、ナチスが民間経済を利用しただけでなく、民間経済の側も、ナチスの台頭を利用して自らの利益の拡大を図ったという構図が、象徴的に描かれていることが感じられます。SSとSAの対立を軸にして、ナチスの本性が暴かれていく過程の描写もみごとです。

それにしても最近のヨーロッパ映画界は、なぜこのような重厚な作品を世に問うことが、できなくなってしまったのでしょうか?